峠の水島家 ~猫を六匹引き取りまして

猫六匹との日々と、日常のつぶやき。

君の名は6 ~ガモちゃんの衝動~

前回の更新から今回の更新までに三か月空いてしまった。

趣味で物を書いているのに締め切り的なものを守る人をわたしは尊敬する。

この間、小松美彦の著作は一冊増えて、新刊のタイトルは「<反延命>主義の時代 安楽死・透析中止・トリアージ」という。小松美彦だけでなく市野川容考と堀江宗正も編著である。内容はというと、安楽死だとか透析中止だとかトリアージとかにバカヤローというといったようなもんだ。ざっくり。

 

 さて話はガモちゃんに戻る。ベッドに横たわるわたしをジーと見ていた頭のデカい不細工な猫、ガモちゃんは、意を決したように駆け寄ってきた。鼻息がフゴフゴ荒い。なんだなんだと横になっていると、耳元によじのぼってきた。そして耳たぶに口をつけて、チューチューとすいながら、顔周りを爪の出た前足でフミフミしだした。

 いてぇいてぇ、爪いてぇ。

 生物的直観により理解。これは子猫のおっぱいを吸う動作。

 これが夫の言ってた、「乳首吸われた」か。

 なるほど。乳離れしてないうちに捨てられたのね。

 どうしたものかと思ったんだが、別に拒否する理由もとくにないので、吸わせておくことにした。吸ってるガモちゃんは必死である。なにも出ないであろうに、吸ってないと死ぬ!という勢いで吸ってる。

 ダイビングが趣味なのだが、怖いなあと思うのが洞窟で方角が解らなくなってエア切れを起こした事故とかで、「レギュレーター全部を口のなかに飲み込んでた」ってヤツである。普通、軽くくわえるんだけど、全部を口のなかに入れるとか普通、できない。どんだけ苦しかったんだ、って話である。ガモちゃんに耳たぶを吸われながら、なにかそうした「決死」とか「苦悶」とか、あまりよろしくないワードを連想する。

 辛抱の時間が過ぎた。

 爪。どうにかならんか。痛い。

 あとで黒木君に聞いたところによると、乳腺を刺激するために爪つきで踏むらしい。わたしの首やあご付近に乳腺はない。勘弁してほしい。

 ガモちゃんはやがて吸いながら寝息を立て始めた。そして耳たぶをくわえたままスウスウと寝息をたてて寝入るが、はっと目覚めてまたしぶとく吸う。眠気と戦いながら吸っているのがありありとわかる。いいから寝てくれ。痛い。

 やがてガモちゃんは吸うのに満足したのかどうなのか、吸うのをやめて、兄弟姉妹の待つ一階の本棚の隅へと帰っていった。

 やれやれ。

 まいったまいった。

 その日は鯖を焼いてみんなに食べさせた。鯖も悪くないらしく、喜んで食べていた。わたしは酒を飲んで適当なものを作って食べて、また寝た。

 その翌日、わたしは重い腰をあげてみんなを獣医に連れて行くことにした。ワクチン?必要かもしれないし。

 すると判明したことがあった。

 スカパラのガモー由来で名付けられた頭のデカいガモーちゃんは、女の子だったのである。そしてわたしは獣医から、

「耳ダニまでいる!アンタ、なんでも拾えばいいってもんじゃないよ!」

と言われ、カーッと腹を立てていた。

 命の弁別に抗うために全員保護することにしたんだ、この田舎医者!

 二度と来るかあ!

 待合室ではよく知らないおばさんに、

「アンタ、この子たちのためにこれからたっぷりお金使うことになるわよ」

とか言われ、医者も医者なら患者の飼い主たちも飼い主だと思い、改めて「二度と来るか!」と思った。このおばさんには、メロネと名付けた垂れ目の女の子をけしかけて、シャーとやらせた。

 こうしてみんなの性別が判明した。マーチン、男の子。ブルー、男の子。ディグ、男の子。バード、男の子。メロネ、女の子。そして可哀想なガモー、女の子。

 かくして耳ダニは駆除され、みんな耳の穴にたっぷり耳垢がたまっているなあと思っていたのだが、それが綺麗になった。あれは全部耳垢ではなくて耳ダニだったのだ。目ヤニみたいなのもとれた。

 だいぶ飼い猫らしくなったみんなは、ねぐらをわたしと夫のベッドの上に移した。わたしは猫まみれになって寝ることになった。そしてガモーちゃんは、連日、就寝前の耳吸いタイムを持つようになり、わたしの耳はあっという間にただれていった。

 痛い。